京のお道具編
最終更新日時: 2018-02-06 18:45:20「型から入る」は京都人の得意わざ。お気に入りの「お道具」を見つけ、それをせっせと使うことで、ちょこっと達人気分を味わったり、三日坊主の歯止めにしたり。まずは「お道具」の入り口から、京都のおいしいお米と仲良くなってみましょう。
其の一 「土鍋ごはん」を炊いてみる!
意外とカンタン しかもテンションあがること間違いなし!!
ちまたでは土鍋で炊いたごはんを食べさせるお店が大人気。京都でも行列のできるお店がいくつかあります。もちろん、お店で食べる魅力は種々あるけれど、「土鍋でごはんを炊く」ということにフォーカスするなら、わざわざ並ばなくても、お家でもじゅうぶんチャレンジ可能。というより、すっごく簡単。水加減をはげしく間違う、といったことでもない限り、誰にでもうまく炊けます。と、なぜここまで断言するかと言えば、私もついこの間まで、土鍋でごはんを炊いたことなかったから。そして、土鍋でごはんを毎日炊いている知人にコツを聞いて、な〜んにも考えず、言われた通りに炊いたら、みごと、ふっくらツヤツヤのごはんが炊けたから。しかも、あんまりおいしいから、調子に乗って毎日炊いてるけれど、絶対失敗しないから! そう、ドクターXの大門未知子くらいの成功率で、毎日、「うわあ、おいしいっ!」と感動もののごはんにありついているワケです。
炊き方は下記の通り。
「土鍋ごはん」の炊き方
イラスト:記村隆鶴(きむらたかつる)
最初の土鍋ごはんは、仕事仲間のオフィスの机の上に場違いに置いたカセットコンロで炊飯。そんな雑な条件下にも関わらず会心の炊きあがり!しかも面白かったのは、わずか一膳で相当不機嫌な人の相好も崩させてしまう、「炊きたて土鍋ごはん」の圧倒的パワーです。
その日は、とある雑誌の入校、つまり仕事の締切で、ひと月のうちでも1、2を争う多忙日。口聞くヒマも惜しい、というほど殺伐とした空気の中、ごそごそ飯を炊きだす私は、あきらかに邪魔モノ。実際、「今、やる? ここで?」的な冷視ビームは、あちこちから届いてましたし。にも関わらず、土鍋がボコボコ鳴りだして、ごはんの炊ける匂いが漂いだすや、さっきまで眉間にシワ寄せてた人たちが、ひとり、ふたりと集まりだし、口々に「なんか手伝います?」、「しゃもじを浸ける水、用意してます?」と、うろうろ、わらわら。15分の蒸らしが終わる頃には鍋を囲むキャンプファイヤー状態で、ちゃんと炊けてるか、誰が蓋を開けるのか、ひと騒ぎの果てにうやうやしくご開帳。立ちのぼる湯気の向こうにツヤツヤのごはんを確認した時には「おおお〜〜っっ!!」の大歓声に拍手まで。急ぎ写真を撮って、「ちょっと食べます?」と声をかけた時の、人々の異常なまでの喜びようといったら! 「いいんですかっっ!?」と列ができ、炊きたて土鍋ごはんをかるく一膳ずつ振る舞っただけなのに、「思わぬご馳走にあずかりまして……」なんて大層なことを言う人まで出てくる始末。いやあ、土鍋ごはん恐るべし。
これをメインに、ごはんのお供を持ち寄って宴会したら、きっと盛り上がるだろうなあ。土鍋は3合炊き程度だと、安いものなら2000円そこそこで手に入ります(私は5合炊きをAmazonで2,840円で購入)。
ちなみに土鍋でごはんを炊きだしてからは、我が家では炊飯ジャーは不使用。というのも、土鍋ごはんは冷めてもモチモチ。この冷めた時の風味が、熱い番茶やほうじ茶の「お茶漬け」にぴったりで、私は大好きです。ホカホカが好きなひとり暮らしの知人は、3合炊いて、お茶わん一杯分ずつをラップに包んで冷凍し、食べる時にレンジでチン。炊きたての風味になるそうです。いずれにしても、ジャーの電源を何時間も点けっぱなしにするより、相当省エネできるはず。翌月の光熱費もちょっぴり楽しみな今日この頃です。

其の二 「一汁一菜」をゆたかに
“三種のお道具”でシンプルごはんをご馳走風に
いくら食べることが好きでも、365日のうちには、「作るのイヤ」、「外食も気が進まない」なんてこともありますよね。そんな時、白いごはんとあり合わせの常備菜や出来合いのおかずを、ぐんとキレイに、ゆたかに見せてくれるのが、気のきいた器のあれこれ。なかでも「豆皿」、「箸置き」、「お盆」(ランチョンマットなども可)を、私は勝手に“三種のお道具”と呼んで、気分が乗らない時こそ、ちょっといいモノ、お気に入りのモノを使います。
すると、あら不思議。冷や奴やスーパーで買って来ただし巻き、ひとつだけ残ったはんぺん、梅干しにインスタントのお味噌汁……程度の献立も、なんだかちょいと洒落た「点心」のような趣きに。
こうしたお道具使いは、目で楽しむ分、ゆっくり食べられ、その結果、少ない量でも食事に満足感が得られるので、ダイエット中の人にもおすすめ。ちなみに私は、この方法でかつて一ヶ月に3㎏近く痩せたことがあります(今は気がゆるんで、もとに戻ってますが。。。)。
さらにこのテクは、お泊まりのカレに「お!やるな」と思わせたい。けど料理には自信なし、といった時の「夜食」や「朝ごはん」にも効果的!現役女子の皆さんはどうぞご参考に。とくに箸置きやランチョンマットなど、置くだけで手間なんてゼンゼンかからないのに、このひとつで、一気に「ちゃんとした感」が出るので、ぜひ使ってみて。家庭的センスをアピールできること請け合いです。

安藤寿和子(あんどうすわこ)
1964年京都生まれ、京都育ち。ライター。Interview&writing オフィスアンド主宰。京都に生きる人、店、職、芸などをテーマとした本づくり、インタビュー、原稿執筆などが仕事の中心。これまで携わったおもな媒体に、季刊誌「JAPONisme」、「ひととき」(新幹線のグリーン車搭載誌)、「別冊太陽」、写真集『錦のみこし―祇園祭と京の台所』(藤本惠一郎)など。京都のふしぎをイラストとエッセイで紹介する『京都のふしぎ・イラスト事典』(ウェッジ)の上梓に向けて準備中。